在校時間上限規制は隠れサービス残業を激増させる
第3回「~公立学校の校長先生のための~やさしい!勤務時間管理講座」(「上限ガイドラインと変形労働時間制~中教審答申を受けて~」) - YouTube
教員の働き方改革クラスタのなかで、待ちに待った動画がアップされました。
前回は「黙示の勤務指示」を初めて公式に認めたり、残業代を認める判例を示したりと、かなり攻めた内容でした。
今回はどうでしょうか?
まずは、文科省が民間の働き方改革に言及し、「このままでは教員を志す若者がいなくなる」と率直に現状を認めたことは画期的です。
就活生はここを見ている…残業は19時までが限界、有休取得10日未満はブラック企業? (via @Pocket) https://t.co/3kAiADo2lB
— もょもと (@bigface1979) 2019年4月24日
柴山昌彦文部科学大臣記者会見録(平成31年4月23日):文部科学省 教員採用試験の倍率が低い理由として、民間の採用意欲が活発と大臣は言う。しかしこれは、民間に人材を取られている事を認めている。なぜ民間に取られると簡単に言うのか?取られたらだめでしょ敗北宣言です。 https://t.co/zQKE6FDhlZ
— もょもと (@bigface1979) 2019年4月23日
しかし、民間と教員では勤務時間の上限について、考え方や制度が全く違います。
文科省の動画等で絶対に使ってはいけない言葉があります。
それは「残業」という言葉です。
なぜなら給特法で超勤4項目以外は残業を命じてはいけないからです。
つまり給特法があるから、残業は本来は0、残業はないはずです。
しかし、10分の休憩すら取れないほど、びっちり詰まった授業数。
絶対に残業しなくては終わらない膨大な校務。
時間外に設定されている部活動など、学校は残業前提で業務が設定されています。
今の業務量のままでは絶対に定時には仕事は終われません。
でも、「残業」とは言えません。
残業と言ったとたんに「給特法違反」です。文科省は「在校等時間」と言うしかないのです。
ここが民間の働き方改革と全く違うところで、残業の上限規制ではなく、在校時間の上限規制を文科省は進めようとしています。
しかしこれには大きな問題があります。
在校時間の上限規制をクリアするためには、教員が学校にいる時間を短くすればいい。
だから授業準備や校務など、学校運営に必要な業務は帰宅後、家でやらせれば、その時間はカウントしなくてもよい。
管理職は「帰りなさい」といって定時になったら教員を学校から追い出す。
「これで上限はクリア、働き方改革成功です。若者の皆さん、こんなホワイトな職場ですから、どうぞ先生になってください。」by文科省
いやいやだめですね。かえって隠れサービス残業を誘発します。
現在のような業務の削減が全く進まない現場に、在校時間の上限をかけることは、かえって働き方を悪化させます。
ヤフーニュースでも大々的に報道されてます。文科省は早急に通知を出して止めた方がいいのでは?これをスルーしたら、ガイドラインは形骸化して、誰も守らなくなりますよ。ガイドラインを守らないと損をする仕組みがないから、誰も守らない。 https://t.co/oBHU2uQqAU
— もょもと (@bigface1979) 2019年4月23日
在校時間の上限規制をかけるなら、まずは部活動ガイドラインの厳守を徹底することや、業務の負担量を数値化し、余計な行事の実施を禁止するなど、業務改善が先です。
業務改善なしでは、隠れサービス残業が増えるだけ。
というか、そもそも給特法があるから「残業」と言えない。
給特法を廃止し、正規の残業にして残業代を支給する。業務は持ち帰り禁止で学校で行うことにすれば、業務を削減しないと莫大な残業代がかかります。お金にシビアな教育委員会は必死になって業務削減を指導するでしょう。
また、上限規制を破った時の罰則は全くありません。部活動ガイドラインが全く守られないのも、罰則がないからです。
民間では、上限規制を破ると罰則があります。規制や法律は罰がないと機能しません。
まずは選抜甲子園の出場校へ「ガイドラインを守らないと夏の甲子園の出場資格を認めない」とか言ってみてはどうでしょう?だって守っている学校は見事に0校ですから。
このように実効性の全くない働き方改革案を、動画で説明しなくてはならない役人さん・・・
本当にご苦労様です。